通信費は、固定費の中でも削減幅が大きい項目です。実際に使っているデータ量が数ギガなのに大容量プランを契約したまま、という状態は珍しくありません。
ただし格安SIMへの乗り換えは、手続きそのものより事前に確認しておくことでつまずきます。手順を追う前に、まずそこから整理します。
乗り換える前に確認する4つのこと
1. 実際のデータ使用量
契約プランの容量ではなく、直近3〜6か月に実際に使った量を確認します。キャリアのアプリやマイページで見られます。
3か月分を見るのは、月によって偏りがあるためです。旅行や出張のある月だけ跳ね上がる、という使い方であれば、その月に合わせるより、普段の量に合わせて必要なときだけ追加する方が安く済むことがあります。
2. 端末が対応しているか
いま使っている端末をそのまま持ち込む場合、その端末が乗り換え先の回線に対応しているかを確認します。
各社が動作確認済み端末の一覧を公開しているので、機種名で調べてください。「たぶん大丈夫」で進めると、開通後に一部の機能が使えないことがあります。
あわせて、SIMロックがかかっていないかも確認します。
3. 通話をどれくらいするか
格安SIMの弱点が出やすいのが通話です。データ通信は安くても、通話料は従量制で高くつくことがあります。
- ほとんど通話しない → 従量制のままで問題ありません
- 短い通話が多い → 5分・10分のかけ放題オプションを検討します
- 長電話が多い → かけ放題を含めた総額で比較してください
通話が多い人は、データ料金だけを見て乗り換えると、かえって高くなることがあります。
4. キャリアメールとキャリア決済
乗り換えで最も後悔が多いのが、この2点です。
キャリアメール(@docomo.ne.jp など)は、乗り換えると原則として使えなくなります。有料で持ち運べる仕組みもありますが、いずれにせよ手当てが要ります。
そのメールアドレスを登録している先を、事前に洗い出してください。銀行、証券、行政、勤務先、各種の会員サービス。パスワード再設定の連絡先になっているサービスが抜けていると、乗り換え後にログインできなくなることがあります。
対処は簡単で、乗り換え前にフリーメールへ移しておくことです。ただし件数が多いと時間がかかるので、乗り換えの前日にやる作業ではありません。
キャリア決済(携帯料金と合算して支払う方式)も使えなくなります。これで支払っているサブスクがあれば、支払い方法を先に変更してください。
乗り換えの手順
準備が済んでいれば、手続き自体は難しくありません。
- MNP予約番号を取得する(他社へ番号を引き継ぐ場合)。現在のキャリアのマイページや窓口で取得します。番号には有効期限があり、申し込み時に一定の残日数を求められることが多いので、取得したら早めに進めてください
- 乗り換え先を申し込む。本人確認書類とMNP予約番号、支払い用のクレジットカードなどを用意します
- SIMまたはeSIMを受け取る。物理SIMは配送、eSIMはオンラインで完結します
- 回線を切り替える。多くの事業者はマイページから自分のタイミングで切り替えられます
- 端末を設定する。APN設定が必要な場合があります。手順書に従ってください
なお最近は、MNP予約番号を取らずに乗り換えられる仕組み(ワンストップ方式)に対応している事業者もあります。対応状況は事業者によるので、申し込み前に確認してください。
つまずきやすい5つの落とし穴
落とし穴1|昼休みと夕方の速度
格安SIM(MVNO)は、大手キャリアから回線を借りて提供しています。そのため混雑する時間帯に速度が落ちやすいという構造的な特徴があります。
典型的なのは平日の12時台と、夕方から夜にかけての時間帯です。
この時間に動画を見る、大きなファイルを扱う、といった使い方をするなら、乗り換え先を選ぶ際に速度の評判を確認してください。逆に、通勤中に音楽を聴く程度なら、ほとんど気になりません。
落とし穴2|解約のタイミングと日割り
契約の締め日と、日割りの扱いは事業者によって異なります。
月末に乗り換えると、旧契約の最終月が満額請求され、新契約も初月から発生して、一か月だけ二重に払う形になることがあります。金額としては大きくありませんが、避けられるなら避けたい支出です。
落とし穴3|端末の分割払いが残っている
端末代を分割で払っている途中で乗り換えると、残債の支払いは続きます。通信契約を解約しても、端末代は消えません。
乗り換えで安くなったつもりが、残債の分だけ相殺されていた、ということが起きます。残債がいくらあるかを確認してから判断してください。
落とし穴4|家族割・光回線とのセット割
大手キャリアの割引は、家族や自宅回線とセットで効いていることがあります。
自分ひとりが抜けると、残った家族の料金が上がることがあります。世帯全体での金額を計算しないと、家計としては損をする場合があります。
落とし穴5|緊急通報と各種サービス
データ通信専用のプランでは、音声通話ができません。当然、緊急通報もできません。
家族の連絡手段として使う端末、特に高齢の家族や子どもの端末を切り替える場合は、音声通話付きのプランを選んでください。料金差はそれほど大きくありません。
乗り換えるべきでない場合
すべての人が格安SIMに向くわけではありません。次のような場合は、大手キャリア内のプラン変更にとどめる方が合理的です。
- 通話時間が非常に長い
- 昼休みや夕方に、速度が必要な使い方をする
- 家族割やセット割が強く効いている
- トラブル時に店舗で相談したい
「安くなるから乗り換える」ではなく、自分の使い方で総額がいくらになるかで判断してください。プラン変更だけでも十分に下がることがあります。
まとめ
格安SIMへの乗り換えで失敗する人の多くは、手続きではなく準備でつまずきます。
- 実際のデータ使用量を3か月分確認する
- キャリアメールの登録先を洗い出し、先にフリーメールへ移す
- キャリア決済の支払い方法を変更しておく
- 端末の残債と、家族割の影響を確認する
この4つを先に済ませておけば、乗り換え自体は数十分で終わります。通信費は一度下げれば毎月効き続ける項目なので、時間をかける価値があります。